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不思議の国のアリス症候群とは?原因や症状、治療について解説します【時間が早くなり体が小さくなってしまう?】

不思議の国のアリス症候群とは?原因や症状、治療について解説します

今回は自分の体が小さくなったと感じたり、時間が早く、あるいは遅く感じてしまう不思議な病気、不思議の国のアリス症候群について解説していきます。

不思議の国のアリス症候群とは

不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome)はルイス・キャロルの童話である「不思議の国のアリス」にちなんで命名された症候群です。

この疾患を初めて提唱したのはJohn Toddというイギリスの精神科医で、自分の身体の一部が通常よりも大きく感じたり、見ている物を大きく感じたり、時間が実際よりも速く過ぎていく感じがしたりするといった奇妙な体験をする症候群です。

Toddは片頭痛やてんかんなどと関係がある奇妙な症状として、この「不思議の国のアリス」の主人公と同様の症状を体験する一群を不思議の国のアリス症候群と命名しました。

不思議の国のアリス症候群の症状について

不思議の国のアリス症候群の症状についてです。

身体像の奇妙な変形(身体図式障害)

自分の身体全体や一部が大きく、あるいは小さく感じることで自分の身体の変形視、あるいは変形感といえる症状です。

頭が膨張して大きく感じたり、腕が長くあるいは短く感じるなどの症状が出現します。

視界に生じる物体の大きさ、距離位置に関する錯覚的誤認

大視症、小視症、運転中に真っすぐな道路がカーブのように見えたり、ジグザクのように見えるというような症状もみられます。  

空中浮揚の錯覚的感覚

実際は浮いていませんが、ふわふわと浮いているように感じることがあります。 

時間感覚の錯覚的変化

映画フィルムを早送りしているような感じで時間経過が異様に速く、あるいは遅く感じられます。

聴覚認知障害

聞こえる声や音が異様に大きく、小さくあるいはゆがんで聞こえます。

その他の症状として、身体心理的な自己二重感、離人症的感覚(自分が身体や精神から抜け出して離れた外部から自分を観察しているかのように感じること)、不安感・恐怖感などがみられるとされています。

不思議の国のアリス症候群の原因となる疾患

不思議の国のアリス症候群の原因となる基礎疾患がいくつか存在します。

片頭痛、てんかん、LSDやメスカリンなどの幻覚誘発剤の中毒、睡眠薬中毒、アレルギー性鼻炎の治療薬であるモンテルカスト、伝染性単核球症(EBウイルス感染症)、統合失調症、うつ病、A型インフルエンザ、急性散在性脳脊髄炎などが報告されていますが、原因として圧倒的に多いのはEBウイルス感染や片頭痛によるものとされています。

EBウイルス感染症に伴う中枢神経合併症は1~10%に生じ、原因として最も頻度が高く小児だけでなく成人にもみられます。

片頭痛は原因としては2番目に多く、身体図式障害の出現頻度が比較的高いとされています。

脳のどの部分が原因となっている?

1948年にBolleaが行った頭頂葉後部の電気刺激実験で、自己像幻視、身体延長感、四肢の消失感などの身体図式障害が生じることから、不思議の国のアリス症候群は頭頂葉の障害であると述べています。

ほかに、中核症状を主体とする例では右頭頂葉の血流低下、周辺症状を主体とする例では右あるいは両側後頭葉の血流低下が、脳電気生理学検査では、広範な脳領域の皮質興奮性の増大が指摘されています。

以上から、主体となる症状により責任病巣が違うことが示唆されています。

治療について

不思議の国のアリス症候群の原因となっている疾患の治療を行うことが重要です。

片頭痛が原疾患であるときは、トリプタンや塩酸ロメリジンなどによる予防的治療などを行ったり、原因薬剤を中止、あるいは軽症例ではNSAIDsを用います。

まとめ

不思議の国のアリス症候群は身体像の奇妙な変形、視界錯覚的誤認などの奇妙な訴えがあるため、精神疾患と誤診されることがあります。

このような症状があった場合は医師は原因をしっかりと特定して対処できるようにならなければなりません。

皆さんも頭の片隅にこの症状の特徴を覚えておいてくださいね。

参考文献

山根清美:その他の神経疾患 不思議の国のアリス症候群.別冊日本臨床 新領域別症候群シリーズ30 神経症候群 (第2版) V, 日本臨床社, 大阪, 864-868, 2014

松浦 雅人:精神科医が知っておくべき症候群 不思議の国のアリス症候群. 臨床精神医学 44(2): 211-217, 2015

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