病気

泣き入りひきつけは遺伝する?|貧血やてんかんとの関係についても解説します

泣き入りひきつけは遺伝する?|貧血やてんかんとの関係についても解説します

今回は泣き入りひきつけについて原因や症状はもちろん、遺伝やてんかん、貧血との関連についても詳しく解説していきます。

泣き入りひきつけとは

泣き入りひきつけは憤怒けいれんともよばれ、生後半年から1歳頃によくみられます。

突然の痛みや恐怖などをきっかけとして、激しく泣き始め、呼気のままで呼吸が停止し顔色不良となり、意識消失、脱力や、その後に1分以内の短いけいれんをきたします。

ですが基本的には、速やかに回復するため発作時には特別な治療は必要としません。

発症頻度について

発症頻度は、海外の報告では数%程度とされており、やや男児に多いとされています。

遺伝するのか

家族歴が34%で認められ、意識消失を呈する重症例では、常染色体優性遺伝が推定されています。

発症しやすい時期は?

発症時期は生後6~12か月がもっとも多いですが、新生児期から発症する症例も報告されています。

2歳6か月を過ぎると発症はまれで、多くは幼児期の4歳ごろまでに発作が消失するとされています。

泣き入りひきつけの分類

臨床的には、発作時の皮膚色からチアノーゼ型と蒼白型に分類されています。

頻度はチアノーゼ型が60%と高く、蒼白型が20%、両方の特徴を持つ混合型は20%です。

症状について

チアノーゼ型

チアノーゼ型は痛みや驚き、要求が満たされ ないなどをきっかけに激しく泣き出し、しだいに呼気が延長し、口唇周囲を中心に顔色が青黒くなり、呼気状態のままで呼吸が停止します。

軽症例では短時間で呼吸が再開し回復しますが、意識を消失する例や、呼吸停止後に全身が硬直し、けいれんを呈することもあります。

蒼白型

突然の転倒による頭部打撲などの予期しない痛みや驚き、恐怖などが誘因となります。

啼泣は短く、あえぐように声を上げてすぐに顔面が蒼白となり失神します。

尿失禁や四肢の短いけいれんを呈する症例もあります。

チアノーゼ型、蒼白型ともに発作の持続は1分以内で、自発呼吸が速やかに回復し顔色も回復することがほとんどであり、ともに予後良好な疾患です。

原因と病態について

病態の詳細は不明ですが、自律神経系の異常が考えられています。

チアノーゼ型は激しく啼泣し呼気状態で呼吸を止め胸腔内圧が上昇することにより静脈還流が減少、心収縮の低下をきたすとされています

蒼白型は、予期せぬ痛みや驚き、恐怖などからの迷走神経刺激によって、徐脈や心拍の停止をきたすことにより、脳血流の量減少、低酸素状態をきたすとされています。

貧血との関連について

泣き入りひきつけの病態に鉄の欠乏、すなわち鉄欠乏性貧血が関与しているとされています。

国内でも重症の泣き入りひきつけ例に経口鉄 剤を投与し全例で発作が消失したという報告もあり、鉄欠乏の関連が示唆されています。

検査について

泣き入りひきつけの診断は臨床症状から判断します。

そのため、これまでは発症時期や症状が典型的で頻度が低い例では検査は行なっていませんでしたが、鉄欠乏性貧血との関連と、鉄剤の有効性が報告されていることから、発作をくり返す症例では鉄欠乏や貧血の有無を検査する必要があります。

てんかんとの関係について

けいれん発作を伴う場合、てんかんとの鑑別に脳波検査を行うことがありますが、てんかん性異常波の検出率は5.7%と低く、てんかんの診断にいたる例は稀であるとされています。

泣き入りひきつけと、てんかんとの関連はほとんど無いと言ってよいでしょう。

治療について

発作頻度の低い例では治療を必要としないことも多いですが前述のとおり、鉄欠乏が疑われる場合は鉄剤の投与を行います。

治療の終了時期は半年から1年の経過観察で発作の再発がなければ終了とします。

まとめ

今回は泣き入りひきつけについて解説しました。

皆さんも参考にしてみてください。

参考文献

安元佐和: 憤怒けいれん. 小児内科 Vol. 5, 643-645, 2018

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Dr.Koro
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病気や育児に役立つ情報を紹介する小児科医です