赤ちゃんの嘔吐の原因となる肥厚性幽門狭窄症とは|吐き方の特徴や、治療について解説します
今回は赤ちゃんがたくさん嘔吐してしまう病気、肥厚性幽門狭窄症について吐き方や原因、治療について詳しく解説していきます。
肥厚性幽門狭窄症とは
肥厚性幽門狭窄症は幽門筋という胃の出口にある筋肉が肥厚することによる胃の排出障害です。
生後2週から12週頃にかけて噴水状の嘔吐を主訴として発症する疾患で、日本での発症頻度は出生1000人に対しておおよそ1~2例とされています。
小児科の日常診療でも遭遇する機会は比較的多い疾患です。
症状について
無胆汁性の噴水状嘔吐が特徴的な症状です。
生後2週過ぎから急激に発症が増加し、生後5週をピークとして生後12週までに97.5%の症例が発症します。
幽門筋の肥厚の進行に従って嘔吐回数は増加しますが、嘔吐後には胃が空虚となるため全身状態がかなり悪化するまでは哺乳力は比較的良好です。
嘔吐が続くと低クロール性代謝性アルカローシスなどの電解質異常、さらに体重増加不良などが進行しついには低栄養を生じるなどして全身状態が悪化していきます。
診断について
診断には幽門筋の肥厚部を確認することが必須です。
以前は幽門部を「オリーブ様」腫瘤として触知することが重視されていましたが、近年では腹部超音波検査による幽門筋肥厚部の詳細な評価が可能となり本症の診断法の主流となっています。
レントゲンでは幽門の狭窄による通過障害による胃の拡張とその先の消化管ガスの消失から、single bubble signを認めます。
超音波所見で幽門筋層の厚さが3mm以上、幽門管の長さが15mm以上が、日齢や体重によらず本症と診断できる基準として報告されています。
さらに拡張した胃の蠕動が亢進しているにもかかわらず、幽門管はほとんど開かず、胃内容の通過が著しく妨げられることも特徴です。
初診時には診断基準以下であっても、次第に幽門筋の肥厚が進行して基準以上となり本症と診断できることがあるので嘔吐が持続するときには超音波検査の再検が有用です。
治療について
基本的に自然治癒はしませんので、嘔吐が続く場合は脱水や電解質異常の是正のため、輸液をなるべく速やかに開始します。
治療は開腹下または腹腔鏡下の幽門筋切開術が第一選択です。
現在は内科的治療として、硫酸アトロピン静注療法も有力な治療の選択肢の一つと考えられています。
まとめ
今回は赤ちゃんで時折見られる肥厚性幽門狭窄症についてでした。
頻回の噴水状の嘔吐があるようなら小児科で相談しましょう。
五藤 周, 増本幸二 :肥厚性幽門狭窄症. 小児内科, Vol.51, 1497-1500, 2019
最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改定第二版. 中山書店, 2017