起立性調節障害(自律神経失調症)について
朝に起きようと思っても頭痛やめまいがひどくて昼過ぎまで起きれない。
午前中に症状がひどくて学校に行けずに困っている人はいませんか。
今回はそんな症状を起こしてしまう起立性調節障害(自律神経失調症)について原因やその治し方について解説していきます。
原因
起立性調節障害は、起立に伴う循環動態の変化に対して、体の調節機構がうまくいかなくなった状態であり、自律神経系による循環調節不全が主要の原因であるとされています。
そのため、起立することにより頭痛、めまい、ふらつきなどの様々な症状が出現します。
起立性調節障害の症状
起立性調節障害の症状については以下の通りとなります。
- 1.立ちくらみ、めまいを起こしやすい
- 2.立っていると気持ちが悪くなる、ひどいと倒れる
- 3.入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
- 4.少し動くと動悸、息切れがする
- 5.朝起きが悪く午前中調子が悪い
- 6.顔色が青白い
- 7.食欲不振
- 8.強い腹痛をときどき訴える
- 9.劵怠感あるいは疲れやすい
- 10.頭痛をしばしば訴える
- 11.乗り物に酔いやすい
上記の11項目のうち3項目以上を認める場合に起立性調節障害を疑い、下記のアルゴリズムに沿って診断を進めていきます。
起立性調節障害は本来、身体疾患ですが自律神経系疾患なので心理社会的要因の影響を受けやすいとされています。
心理的ストレスが加わると中枢を介して自律神経系循環調節が不備となり、身体症状が目立つようになります。
いじめや失敗体験を契機にしばしば発症、増悪するのはこのためです。
また、社会生活に支障をきたす期間が長期化すると、それによる劣等感、不安、焦燥、孤立感からさらに身体症状が悪化、不登校や抑うつなど二次障害にいたるなどの悪循環となります。
検査
検査は採血などで基質的な疾患を除外できれば起立性調節障害を疑い、新起立試験を行います。
横になって安静にしている時と、立った時の心拍数、血圧などの経時的な変化を記録して起立性調節障害のサブタイプを判定します。
このサブタイプにより治療薬が変わるので大事な検査になります。
新起立試験
- 1.学校を休むと症状が軽減する
- 2.身体症状が再発・再燃をくり返す
- 3.気にかかっていることを言われたりすると症状が増 悪する
- 4.1 日のうちでも身体症状の程度が変化する
- 5.身体的訴えが 2 つ以上にわたる
- 6.日によって身体症状が次から次へと変化する
以上のうち4項目がときどき(週1~2回)以上みられる場合、心理社会的因子の関与ありと判定し「心身症的起立性調節障害」と診断します。
起立性調節障害の直し方について
治療薬について
治療薬についてはメトリジンなどの西洋薬と漢方薬の組み合わせで行います。
用量や薬剤の選択については以下の通りです。
・メトリジン:朝食前と昼食後/眠前
(7-9歳:1-2錠、10-12歳:2錠、13歳~2-3錠)
・リズミック:朝食前と昼食後/眠前
(7-9歳:0.5錠、10-12歳:0.5-1錠、13歳~1-2錠)
・インデラル:朝食前、昼食後(7-12歳:1錠、13歳~1-2錠)
頭痛があれば半夏白朮天麻湯、頭痛がなければ補中益気湯
あるいは
精神身体型⇒柴胡桂枝湯
循環虚弱型⇒半夏白朮天麻湯
胃腸虚弱型⇒小建中湯
上記で無効な場合は、虚弱で疲れやすく頭痛のない場合に補中益気湯を使用、めまいをおこしやすく車酔いしやすい場合には苓桂朮甘湯を選択する。
薬剤の効果発現までには2週間前後を要するため、2週間後以降に新起立試験を行い、自覚症状の変化も考慮して継続・変更を検討します。
また、起立性調節障害の方の約半数に不登校が合併し、不登校を生じていない起立性調節障害の約半数に心理社会的問題があり、起立性調節障害の70~80%を心身症と考えるべきとされています。
そのため薬物療法だけで効果がなく、心理的な要因がありそうであればカウンセリングなどの心理療法も考慮します。
日常生活の注意点
日常生活の注意点ですが基本は規則正しい生活と塩分、水分の摂取が大事になってきます。
それ以外の注意点としては以下の通りです。
- 起立は頭を心臓の高さまで下げ、ゆっくりと行う。
- 起立保持時は足踏み、両足をクロスするなどして下半身の血流貯留を少なくする(脳血液量低下を防ぐため)。
- 塩分10~12g/日、水分1.5~2L/日摂取(循環血漿量維持のため)。
- 日中は仰臥位を避ける。
- その他としては、暑気を避ける、規則正しい生活(症状のために実行困難な場合があることは理解しておく)、適度な運動を心がけるなど
起立性調節障害についての書籍
小児心身医学会ガイドライン集―日常診療に活かす5つのガイドライン
起立性調節障害について診断から治療まで詳細に書かれています。
起立性調節障害について関わる医師は必ず目を通しておきましょう。
30日で朝「スッキリ目覚める」体質にする方法!: もう、起立性調節障害で悩む必要はありません。
起立性調節障害の患者さんから評判の良い本です。
具体的なアドバイスが載っており悩んでいる方は一度読んでみると良いと思います。
改訂 起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応
一見すると怠けているだけと思われがちな起立性調節障害ですが、実際は体の病気です。
そんな誤解されがちな起立性調節障害の子どもに対する考え方と対応の仕方が書いていますので、親御さんは一度読んでみてはいかがでしょう。
まとめ
起立性調節障害による症状は適切な治療、対応、関わりによって必ず思春期以降に改善していきます。
症状が改善しきるまで時間はかかるかもしれませんが、それまでに適切な対応を行いうまく起立性調節障害と付き合っていけるよう、是非参考にしてみてください。
松島礼子. 起立性調節障害. 小児内科, Vol.51 No.10, 2019‒10
起立性調節障害ワーキンググループ:小児起立性調節 障害診断・治療ガイドライン.日本小児心身医学会(編):小児心身医学会ガイドライン集 日常診療に活かす 5 つのガイドライン,改訂2版,南江堂,東京, pp25‒85,2015