歌舞伎症候群について解説します
皆さん、名前がとても特徴的な歌舞伎症候群をご存じでしょうか。
今回はそんな歌舞伎症候群について原因や症状などについて詳しく解説していきます。
歌舞伎症候群とは
歌舞伎症候群は、発達遅滞や筋骨格系の異常を伴う疾患です。
1981年に新川詔夫先生と黒木良和先生によって、特徴的な顔貌を呈する疾患として初めて報告されました。
顔貌の特徴が歌舞伎演者の隈取(くまどり)に似ていることから歌舞伎症候群と命名されています。
顔の特徴について
歌舞伎症候群の方は目に特徴的な所見があります。
下眼瞼外側の1/3が外側に反っており、他には切れ長の目、眉毛の外側が薄く弓の形をしているといったものがあります。
原因について
歌舞伎症候群はKMT2DまたはKDM6A遺伝子の変異が原因とされており、患者の60%以上にKMT2D遺伝子変異、5%程度にKDM6A遺伝子変異が認められます。
ですが、遺伝子の変異陰性例が多く、20~30%の症例については遺伝子変異は見つからないといわれています。
発症率は3万2千人に1人と推定されています。
症状と診断について
臨床診断または、遺伝子変異解析により診断します。
遺伝子変異は前述の通り検出できないことがありますので臨床診断を優先します。
下記に示す臨床症状から歌舞伎症候群を疑い、遺伝子変異が認められなくても歌舞伎症候群の臨床診断が可能です。
①筋緊張低下、発達遅滞、知的障害
②1. 下眼瞼外側1/3の外反・切れ長の眼瞼裂を含む特徴的な顔貌、2. 外側1/3が薄い弓状で幅広い眉、3. 押しつぶされた鼻尖部、4. 突出したまたはカップ状の耳、5. 指尖部の隆起のうち、2つ以上
③KMT2DまたはKDM6A遺伝子の病的変異
以上のうち、①+②+③、①+②、または①+③で診断が確定となります。
このうち知的障害は90%以上の患者に共通してみられる症状です。
下眼瞼外側1/3の外反・切れ長の眼瞼裂は、歌舞伎症候群を疑う特異顔貌ですが、これらの所見ははっきりしないこともあります。
赤ちゃんのときは症状がはっきりしないことも多く低血糖や関節脱臼、先天性心疾患、口唇・口蓋裂などがあり、これらの症状をきっかけにその他の所見と合わせて診断されることもあります。
乳幼児期になると徐々に目の所見がはっきりしてくるため気づかれることも多くあります。
治療について
現在、歌舞伎症候群についての特異的な治療法はありません。
症状もかなり個人差がありますので各々、その症状に対して治療、対処療法を行います。
歌舞伎症候群の有名人は
芸能人などで特徴的な顔立ちの方はいますが、歌舞伎症候群と公表されている方はいません。
俳優の加藤諒さんは顔立ちが歌舞伎症候群に似ているのではないか?とネット上では書かれていますがおそらく違います。
まとめ
今回は歌舞伎症候群についてでした。
特徴的な症状がありますが、なかなか診断の難しい病気です。
皆さんも参考にしてみてください。
新薬と臨林 J. New Rem. &Clin. VoL69 No. 1 2020
小児内科 Vol. 48 No. 10, 2016-10