病気

【改訂版】インフルエンザが流行中!ワクチンは?治療は?いつ受診すればいいの?

インフルエンザについて解説していきます

どうもDr.Koroです。

巷ではインフルエンザが流行し始めてきましたが皆さんは皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今年は夏ころからちらほらインフルエンザが流行ってきた印象ですが最近になってますますインフルエンザが猛威を振るっています。

うちの子どもは9月くらいにインフルエンザに罹ってしまい大変でした。

高熱が出るのでぐったりしますし、熱せん妄や脳症など意識障害をきたしやすいので心配ですよね。

そこで今回はインフルエンザに罹った時の受診すべきタイミングや治療、予防法などについて詳しく解説します。

インフルエンザとは

インフルエンザとはインフルエンザウイルスによって起こる気道感染症です。

高熱、倦怠感、頭痛、関節痛などの症状を伴います。

ただこれらの症状は健常な方であれば7日以内には自然軽快することがほとんどです。

ただし意識障害やけいれんなどがある場合はインフルエンザ脳症の可能性があるのですぐに病院を受診してください(インフルエンザ脳症については後日詳しく説明したいと思います)

潜伏期間は1-2日程度と短く感染力も強いため感染者が短期的に集中して発生することが多いとされています。

冬以外にもインフルエンザが流行るのはなんで?

日本のインフルエンザの流行は毎年12~1月の寒い時期に始まります。

ただ沖縄県では冬だけではなく夏にもインフルエンザの流行が起きます。

夏休みに沖縄などインフルエンザの流行地域に旅行に行った子たちがインフルエンザにかかってしまい夏休みが終わって学校、幼稚園、保育園などの集団生活に戻るとそこで爆発的にインフルエンザが流行してしまうものと考えられます。

インフルエンザワクチンは何からできてるの?

インフルエンザワクチンは鶏の卵から作られます。

ワクチンを作るために大量のウイルスを増殖させるため卵を使用しているのです。

ただ、ごく微量の卵の成分しか入っていないため、軽い卵アレルギー症状だけの方は心配ありません

しかし、強い卵アレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことのある方は接種に注意が必要です。

かかりつけ医に相談してください。

ワクチンは打ったほうがいいの?

ワクチンを打つとインフルエンザは本当に予防できるのでしょうか。

  ・ワクチンを接種しなかった方100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%)
・ワクチンを接種した方200人のうち24人がインフルエンザを発病(発病率12%)
ワクチン有効率={(30-12)/30}×100=(1-0.4)×100=60%

 ワクチンを接種しなかった人の発病率(リスク)を基準とした場合、接種した人の発病率(リスク)が、「相対的に」60%減少しています。すなわち、ワクチンを接種せず発病した方のうち60%(上記の例では30人のうち18人)は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができた、ということになります。
現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。


※1平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」
※2平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究(研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))」

以上のようにワクチンを接種したからといって絶対にかからなくなるわけではありませんが発病率、重症化を防ぐために積極的に打つべきと考えます。

ワクチンを打ってもなぜインフルエンザにかかってしまうの?

ワクチンをせっかく打っても、かかってしまうことがあると聞いたことありませんか?

実は本当です。

これには以下の理由があります。

インフルエンザウイルスは感染時に受容体に結合する表面抗原であるヘマグルチニン(HA)に変異を起こしやすく、過去に誘導された免疫から逃避する。現在ワクチンで誘導される免疫はHAの受容体結合部位に対する特異的な抗体を誘導し、変異株には効果が低くなる。さらに感染を阻止するためには、感染の場である上気道粘膜上に感染を阻止しうる免疫を誘導する必要がある。現行のワクチンにより誘導される血中の中和抗体は上気道の粘膜表面で起こるインフルエンザウイルスの感染阻止には不十分である。そのため、多くの人がワクチンを接種しているにもかかわらず、インフルエンザの流行は治まらないのである。

長谷川秀樹:インフルエンザの予防:臨床と微生物. vol. 44: 27-31, 2017

つまり、ワクチンを打ってもインフルエンザにかかってしまう理由は2つあって

・インフルエンザウイルス自体がワクチン接種で作られた抗体(インフルエンザウイルスを攻撃して感染を防ぐ)に対して変異を起こし、抗体から攻撃されるのを防ぐ

・ワクチン自体が血中にインフルエンザウイルスの抗体を作るが、実際に感染を起こす上気道の粘膜上での抗体を産生するには不十分である

ということなんです。

ウイルスは変異を繰り返すため一生のうちに何度も感染することもありますし、そのため毎シーズン、ワクチンを接種する必要があります。

ワクチンは何回接種すればいいの?赤ちゃんは打っていいの?

対象は生後6か月以上の乳児からになります

生後6か月以上から12歳までは2~4週間空けて2回接種します。

13歳以上では1回接種です。

いつ受診すべき?

インフルエンザに感染しているかどうかはインフルエンザウイルス迅速抗原キットを用いて診断します。

キットですが基本的には発熱から12時間以内だと検査の感度が低いのです。

そのため熱を出してすぐに受診しても病院によっては検査をしないところもあります。

また薬は発症後48時間以内に飲まないと十分な効果が得られないとされています。

なので発熱してから12時間~48時間の間が受診の良いタイミングでしょう。

治療は?

治療は内服薬のタミフル、ゾフルーザ、吸入薬のリレンザ、イナビル、点滴のラピアクタなどがあります。

各薬の特徴について説明していきます。

抗インフルエンザ薬について

タミフル

ドライシロップとカプセル製剤があります。

小児の場合は1回量として2mg/kg(最大量 75mg/回)を1日2回、計5日間

新生児、乳児の場合は1回量として3mg/kgを1日2回、計5日間投与です。

添付文書には副作用として消化器症状(嘔気、嘔吐)、異常行動が記載されています。

ただ、異常行動に関しては平成30年日本医療研究開発機構(AMED)研究班の検討によりインフルエンザ罹患後の異常行動がタミフル使用者に限った現象ではないと判断されており、10代の患者であっても使用は問題ありません。

薬の種類に限らずインフルエンザ感染自体の影響で異常行動のリスクがありますので最低でも発熱から2日間は様子を注意してみてあげてください。

リレンザ

吸入粉末剤です。

そのため、この薬の対象となるのはしっかり吸入ができる人です。

しっかり吸うことができない小さい子どもや、喘息など呼吸器系の病気のある方には処方はしません。

10mgを1日2回吸入、計5日間です。量は成人と同じです。

乳糖が含まれているため、乳製品に対してアレルギーのある方は注意が必要です。

イナビル

吸入粉末剤です。

10 歳未満の場合は20mg を単回吸入投与。10 歳以上の場合は40mg を単回吸入投与します。

リレンザとの違いは1回の吸入で治療が済む点です。

注意点としては、これもリレンザと同じくしっかり吸える方が対象であることと、乳糖が含まれていますのでアレルギーのある方は注意が必要です。

ラピアクタ

点滴で用います。

小児は10mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注します。

内服、吸入ができなかったり、入院が必要な重症な方が対象です。

ゾフルーザ

錠剤です。

1回の投与で済むのがタミフルとの大きな違いです。

ただ耐性ウイルスの出現が報告されており感染症学会からは外来で単独で使用すべきではないと報告が出されています。

現時点ではその他の薬剤を使用すべきと考えます。

今回はインフルエンザについてまとめてみました。

皆さんもインフルエンザにかからないように気を付けてお過ごしください。

それでは。

参考:
・日本小児科学会 新興・再興感染症対策小委員会. 予防接種・感染症対策委員会: 2018/2019 シーズンのインフルエンザ治療指針
・厚生労働省 インフルエンザQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

・沖縄県感染症情報センター
・知花なおみ「沖縄で夏季にインフルエンザが流行するのはなぜですか」『インフルエンザ』メディカルレビュー社,2013年.p89-89
・遠藤文夫(2017)『最新ガイドライン準拠小児科診断・治療指針 改定第2版』中山書店

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