病気

溶連菌に感染するとチックになってしまう?【PANDAS】について解説します

溶連菌に感染するとチックになってしまう?【PANDAS】について解説します

溶連菌(A群溶血性連鎖球菌)に感染した後にチックなどの症状を起こすことがあり、小児自己免疫性溶連菌感染関連性神経精神障害(Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorder Associated with Streptococcal infections:PANDAS)といわれています。

今回はそんなPANDASについて原因や治療について解説します。

PANDASとは

A群溶血性連鎖球菌感染によって引き起こされるチック障害や精神神経障害を呈する病態として、Swedoらによって1998年に提唱され、5項目の診断基準とともにPANDASの概念が提唱されました。

男児に多く、発症年齢は3歳から思春期の開始までとされ、6~7歳に多いとされています。

診断基準

①強迫性障害あるいはチック障害の存在
②発症は3歳から思春期の始めまで
③急激、劇的な症状・症候の発現
④発症の時点でのA群溶連菌感染の関連性
⑤書字障害、舞踏病運動、チックなどの神経学的異常

原因・病態生理  

大脳基底核の機能障害であると考えられており、A群溶血性連鎖球菌と尾状核・被殻などの脳内成分との分子相同性や、自己免疫を介した抗原抗体反応により神経伝達異常がおこると推定されています。

発生頻度  

小児全体としての発生頻度は不明ですが、強迫性障害、チックの増悪した144例中45例(31%)にA群溶連菌感染が先行したという報告があります。

症状・診断  

症状は、診断基準にあげたチックや舞踏病運動などの神経障害、強迫性障害や不安症などの精神障害が急性に発症し、それらに先行してA群溶血性連鎖球菌感染が認められれば本性が疑われます。 

画像診断は、MRIにて大脳基底核の拡大や、SPECTにて基底核の血流増加が報告されています。

治療・予後

PANDASの治療には、迅速キットなどでA群溶血性連鎖球菌の存在が証明されている例では抗菌薬投与を行います。

チックや強迫症状にはそれぞれドパミン受容体遮断薬やαアドレナリン受容体作動薬、セロトニン再取り込み阻害薬が使用されます。

さらに重症例、難治例では免疫グロブリン投与や血漿交換が行われます。

まとめ

今回はチックの原因となる溶連菌感染症について解説しました。

チックの症状があれば溶連菌感染がなかったか注意してみてください。

参考文献

金成彌: 小児自己免疫性溶連菌感染関連性神経精神障害. 小児科診療. 2009

野末裕紀ら:小児自己免疫性溶連菌感染関連性精神神経障害:小児内科 Vol. 40 No. 3, 486-487, 2008-3

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Dr.Koro
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病気や育児に役立つ情報を紹介する小児科医です