病気

子どもが癇癪(かんしゃく)を起こしたら|原因や具体的な対処法、漢方薬などの治療について解説します

子どもが癇癪(かんしゃく)を起こす原因や対処法について解説します

子どもが大きくなって自我が芽生えてくるとかんしゃくを起こすことがしばしばあります。

子どもの成長の過程と思っても余裕がないときは大変です。

今回はそんなかんしゃくについて原因や対処法、治療について解説していきます。

かんしゃくとは

発達課題にある子どもでは自分の思いどおりにならない状況に直面すると、自分の思い描いていた世界が突然に目の前からなくなってしまったと感じ、強い精神的な混乱からパニックとなることがあります。

このような状況は一般的に「かんしゃく」とよばれています。

かんしゃくは思いどおりにことが運ばないときにおこす抗議行動であると同時に、思いどおりにいかない状況を何とかかわす回避行動とされています。

かんしゃくの原因とは

色々な興味や関心が広がってくる発達段階になると、かんしゃくがよくみられるようになります。

かんしゃくでは、自分の想像と現実が違ってしまったことと、自分のすべきことがなくなってしまったことにより生じます。

思いどおりにいかないという認識には個人差があります。

また、変化への不安が強い子どもは、自分の予想や期待とわずかな違いがあってもかんしゃくは激しいものになってしまいます。

また、違いへの許容度は高いものの、違うと認識した場合への対処行動のバリエーションが乏しい場合にもかんしゃくは激しくなってしまいます。

つまり、ひどいかんしゃくを起してしまう原因は、変化への不安が極端に強いか、その対処行動のバリエーションが乏しいという2パターンがあるのです。

かんしゃくを起こしたときの対処法

かんしゃくの軽減や予防のためには「本人の想像を現実に即したものとするようなイメージ」と「本人が取り組むことのできる遊びや満足できる状態」を提供することが必要となります。

かんしゃくをおこすと、大きな泣き声をあげて目を閉じてしまい、外側からの情報や刺激を入れにくくなってしまいます。

そのため本人が興味や関心を示す好きなもの(新しい玩具やお菓子など)の呈示をすることで、頭の中のイメージに固執する状態から現実の目の前のことに注目する状況をつくることが第一です。

子どもの行動に対して「ダメ」と真正面からぶつかるのではなく、「○○ちゃんこれ楽しそうだね?」「新しいおもちゃを見に行こうか」などと、別のものに注意を向けさせることが大事です。

もし切り替えの苦手な子どもでしたら、その子のわかる方法(写真や絵カードなど)を使って伝えるというのもポイントです。

この場合はまず子供にとって「得になる、嬉しい」予定を伝えることが、定着させるポイントになります。

かんしゃくの強い子に読んでほしい絵本

子ども向けの絵本で「かなしくなったら やってみて!」という絵本があります。

子ども自身で感情をマネジメントできるようになる呼吸セラピーを、絵本を読んで学ぶことができます。

普段の読み聞かせでこの絵本を一緒に読んであげることで、子どもがネガティブな感情になってしまったときもうまく対処できるようになるかもしれません。

かんしゃくに使われる漢方薬について

子どもの心に不調が生じてもすぐに薬物治療を行う必要はありません。

ただ子どもの治る力を手助けしてあげるという意味で漢方薬を用いることがあるので紹介します。

子どものかんしゃくでよく使われるのが抑肝散という薬です。

用量は子どもの場合は0.1g/kg/日分3 食前または食間で使用します。

抑肝散

抑肝散は,釣籐鈎という生薬が重要な役目を果たす処方です。

釣籐鈎は、アカネ科、カギカズラ属に属する植物の枝にあるカギのように出ている部分を乾燥させたものです。

釣籐鈎には高ぶった精神を抑える成分が含まれています。

また、緊張から来る筋肉などのけいれんを和らげる作用があるといわれています。

怒りの感情が強く、常に緊張を強いられているような症例に効果があります。

<参照>森蘭子:子どもの心に効く漢方, チャイルドヘルス Vol. 19 No. 6

飲ませ方の工夫

抑肝散は苦みを伴う独特の味があります。

乳児の場合少量の水と混ぜて団子状にして口の中に擦り付け、直後にミルクなどを上げるといいでしょう。

1歳以上であればハチミツやメープルシロップもおすすめです。

年長児でアレルギーがなければピーナッツバターやチョコレートアイス、ココアなどと一緒にあげると苦みが目立たず飲みやすくなります。

まとめ

今回はかんしゃくについて解説しました。

もし、子どもがかんしゃくをおこしてしまったときも、かんしゃくは自分の辛い気持ちをうまく伝えられない状態」と考えましょう。

叱るのではなく「辛いね。嫌だったね」と本人の気持ちを代弁しながらその場を速やかに離れ、気持ちを受け止めながらクールダウンさせてあげましょうね。

参考文献
  • 林隆:小児科臨床 75:823-830, 2012
  • 山崎知克:小児科診療 75:1972-1974, 2012
  • 森蘭子:子どもの心に効く漢方, チャイルドヘルス Vol. 19 No. 6
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