猫ひっかき病の症状や治療について解説します
みなさんは猫ひっかき病という一風変わった名前の病気をご存知でしょうか。
猫ひっかき病は、猫によるひっかきなど、猫との接触が原因で生じます。
今回はそんな猫ひっかき病の原因や検査、治療について詳しく解説していきます。
原因について
原因は、猫が保菌しているBartonella属に属するBartonella henselaeによる細菌感染です。
ウイルス感染と思っている方も多いのですが違います。
また、ネコひっかき病は人獣共通感染症といい、猫、人の両方に感染するのが大きな特徴です。
人獣共通感染症とは
人と動物の両方に感染する病気の総称で動物から人に感染するものがメインで、動物では発症しないものもあります
症状について
症状としては、 ネコとの接触後または受傷後10~14日に局所リンパ節が腫大し、発熱、全身倦怠感などの症状が数週間持続します。
典型的な場合は、上肢の創傷では腋窩リンパ節が、下肢の創傷では鼠径リンパ節の腫脹を認めますが、頸部のリンパ節腫脹がみられることも多くあります。
その他の症状では微熱、全身倦怠感、関節痛、悪心、嘔吐、頭痛、食欲不振などもあります。
ただこれはあくまで典型例であり発熱以外にほとんど症状がないこともあります。
頻度としては患者の5~14%に非定型的な症状が出現するとされており、約6%にParinaud結膜腺症候群(耳介前リンパ節の腫脹を伴う結膜炎)が出現し、約2%に神経学的合併症が出現します。
「猫がよく使っているソファからも感染するのでは?」と心配される方もいますが多くの場合、感染は成立しないと考えられます。
ただ、ソファに原因菌がいて、皮膚に傷があった場合そこから細菌が侵入する可能性はゼロではありませんので、猫ひっかき病に限らず皮膚のケアはきちんとしておきましょう。
検査は
経過からこの疾患が疑われれば超音波、CT、MRIなどの画像検査を行いリンパ節腫脹および膿瘍形成などの所見を確認します。
確定診断にはBartonella henselaeの分離(菌をみつけること)が必要でチョコレートまたは血液寒天培地を用います。
菌の発育には通常3~5週間を必要とします。
また、本菌は赤血球の中に感染しているので末梢血や、他にリンパ節生検組織、排膿液、穿刺吸引液などからPCR(polymerase chain reaction)法で、B. henselae DNAの検出が可能です。
他にはリンパ節の生検で菌を確認したり、抗体検査で抗体価の上昇を確認します。
治療は
猫による受傷直後は洗浄、消毒などの創傷部処置を行い、ゲンタシンなどの外用薬を用います。
ウイルス感染ではなく細菌による感染ですので、抗菌薬の予防投与を行う場合もありますが自然治癒も多いため投与は基本的には行いません。
治療は自然治癒傾向のないリンパ節腫脹や発熱が長期間持続する場合、また重篤な全身症状を伴うものにのみ行い、マクロライド系抗菌薬が一般的に用いられます。
まとめ
今回は猫ひっかき病について解説しました。
皆さんも原因がわからない発熱が続いたら注意してください。
沼崎啓: ネコひっかき病(バルトネラ感染症). 小児科診療, 81巻-増刊号,151-152, 2018