アトピー性皮膚炎の原因や治療についてわかりやすく解説します
アトピーについては怪しげな民間療法も含め様々な治療法が乱立しています。
今回はアトピー性皮膚炎についてガイドラインに基づいて重要なポイントについて解説します。
また、ガイドライン以外だと「世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方」 が最新の論文をもとに非常に詳しく、かつ分かりやすくまとまっていますのでおすすめです。
アトピー性皮膚炎の定義
アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返すかゆみのある湿疹を主病変とする疾患で多くはアトピー素因を持つとされます。
特徴的な左右対称性の分布を示す湿疹性の疾患で、年齢により好発部位が異なります。
乳児期あるいは幼児期から発症し小児期に改善する場合と、再発を繰り返して症状が成人まで持続する特徴的な湿疹病変が慢性的にみられる場合があります。
アトピー性皮膚炎の病態について
アトピー素因(体質)とバリア機能の脆弱性等による皮膚を含む臓器の過敏を背景に、様々な病因が複合的に関わる事がアトピー性皮膚炎の病態形成に関与するとされています。
- 皮膚の過敏:角層・表皮のバリア機能障害
- 炎症機構:サイトカイン、ヒスタミンなどにより炎症を惹起する
- かゆみ:サイトカイン・ケモカインによりかゆみを惹起。慢性炎症で皮膚の感覚過敏あり。
アトピー性皮膚炎はこれらの要素が複合的に関与している。
アトピー性皮膚炎のかゆみを悪化させる原因
アトピー性皮膚炎の痒みの誘発・悪化因子として温熱、発汗、ウール繊維、精神的ストレス、食物、飲酒、感冒などが特に重要とされています。
子どものアトピー性皮膚炎の有病率について
1992年から2002年までの10年間の国内での皮膚科医の健診によるアトピー性皮膚炎有症率調査に関する文献14編の解析によると、年齢別の有症率は、乳児で6~32%、幼児で5~27%、学童で5~15%、大学生で5~9%でした。
加齢とともに有病率が減少していることが分かります。
アトピー性皮膚炎の診断基準
1)瘙痒、2)特徴的皮疹と分布、3)慢性・反復性経過の3つの基本項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断します。
疑い例では急性あるいは慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考にして診断します。
1.瘙痒
2.特徴的皮疹と分布
・急性病変:紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮
・慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮
・左右対側性
好発部位:前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹
3.慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する) (乳児では2ヶ月以上,その他では6ヶ月以上を慢性とする)
上記1、2、および3の項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、 年齢や経過を参考にして診断する。
アトピー性皮膚炎の重症度について
アトピー性皮膚炎の重症度は軽症~最重度に分けられます。
- 軽症:面積にかかわらず、軽度の皮疹のみみられる。
- 中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる。
- 重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満にみられる。
- 最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる。
治療について
治療の最終目標は、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達しそれを維持することです。
①薬物療法、②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、③悪化因子の検索と対策の3点が基本になります。
- 抗炎症外用薬:ステロイド外用薬、非ステロイド性抗炎症薬、プロアクティブ療法
- 抗ヒスタミン薬
- シクロスポリン
- ステロイド内服薬
- 漢方薬
- 保湿外用剤
- 入浴・シャワー浴と洗浄
- 非特異的刺激
- 接触アレルギー
- 食物
- 吸入アレルゲン
- 有用な吸入抗原の特異的IgE抗体と対策
- 発汗
- 細菌・真菌
まとめ
今回はガイドラインから重要事項を抜粋し紹介しました。
より詳しい内容など、興味がある方はリンクをつけているので参照してみてください。
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018