乳児ボツリヌス症の原因や治療について解説します
ボツリヌス症はボツリヌス菌が産生する毒素が原因で起きる疾患です。
ボツリヌス症は発症機序の違いにより4つに分類されます。
- 食餌性ボツリヌス症:食品中で産生された毒素を食品とともに摂取して生じる
- 乳児ボツリヌス症:経口摂取された芽胞が乳児の腸管内で発芽・増殖し産生された毒素によって起きる
- 創傷性ボツリヌス症:創傷部位から侵入した菌によって産生された毒素によって生じる
- 成人腸管定着ボツリヌス症:菌に汚染された食品を摂取し腸管内に菌が定着して毒素を産生し乳児ボツリヌス症と類似の症状が長期にわたって持続する
今回はそのうちの一つである乳児ボツリヌス症について詳しく解説します。
乳児ボツリヌス症の原因は
原因はボツリヌス菌で、長さ4~8mmの大型細菌です。
1986年に千葉県で重症の神経症状を呈した日本初の乳児ボツリヌス症が報告されました。
ボツリヌス菌は芽胞の状態で土壌、河川、湖沼、海水、泥などの自然界に広く分布しています。
ハチミツが原因食材として有名ですが、あらゆる食品の原材料がボツリヌス菌に汚染される可能性があります。
なぜ乳児(1歳未満)でボツリヌス症になってしまうのか
1歳以上の小児では芽胞を摂取しても、ボツリヌス菌は不活化されるので発芽・毒素産生に至りません。
ですが乳児(1歳未満)では乳児の腸内細菌叢が未発達であるので、ボツリヌス菌が不活化されずに増殖し発芽して毒素が産生されてしまうと考えられています。
乳児ボツリヌス症の症状は
乳児ボツリヌス症は芽胞から毒素産生までの期間があるので、潜伏期間は3~30日と推定されています。
ボツリヌス菌が産生する毒素は、神経末端でアセチルコリンなどの神経伝達物質の放出を阻害するため四肢の麻痺が生じ重症になると呼吸筋も麻痺して死に至ります。
乳児では90%以上の症例で便秘がみられ、ほかには活気不良、哺乳不良、弱い泣き声、そして全身の筋力低下を起こします。
診断方法は
患者の便中からボツリヌス菌あるいは毒素が検出されれば確定診断となります。
診断がついた後は原因を調べるために食物や井戸水など環境検体を調査します。
治療は
治療は支持療法と免疫療法に分けられます。
支持療法は輸液や呼吸器、栄養管理などを行い毒素が体内から排出され症状が改善するのを目指します。
米国では免疫療法はヒト型抗毒素血清とウマ抗毒素血清の静注がありますが、国内では認可されていません。
現在ボツリヌス症に対しては前述した支持療法しかなく、今後抗毒素血清の国内での導入が望まれます。
まとめ
ボツリヌス症はハチミツだけではなく様々な食材で発症する可能性があります。
乳児ボツリヌス症は最初の症状も便秘だけだったりとほかの疾患と鑑別するのも難しく、国内では特異的治療もまだありません。
ネットにある離乳食のレシピではハチミツが入っているものも紹介されていることもあるので注意しましょう。
- 日本細菌学会ホームページ URL: http://jsbac.org/youkoso/clostridiumBotulinum.html
- 国立感染症研究所ホームページ https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/7275-botulinum-intro.html