お尻に穴がもう一つある腰仙部皮膚陥凹について解説します
今回はお尻の上にある小さな穴、腰仙部皮膚陥凹(皮膚洞、毛巣洞など)についての原因や検査、治療と二分脊椎との関連について解説していきます。
腰仙部皮膚陥凹とは
先天的に腰からお尻にかけて皮膚の穴(陥凹)を認める場合、腰仙部皮膚陥凹といい、皮膚洞もしくは毛巣洞と呼ぶこともあります。
小児科医はdimpleと総称することが多いです。
これらは胎生期の神経管閉鎖異常が原因とされており、皮膚表面から体内に向かう管腔構造です。
皮膚洞とは
皮膚陥凹から皮下にかけて瘻孔を形成し、場合によっては腰仙椎、脊髄ら直腸などと交通している状態です。
瘻孔から細菌が混入し局所感染もしくは脊髄腔内の感染症を起こす可能性があり、切除手術の対象となります。
毛巣洞とは
また、小児期の毛巣洞は皮膚洞と同義で用いられることが多いですが通常、毛巣洞は臀部に毛髪の多い成人男性に発症する肉芽腫形成病変です。
そのため現在では後天性とする考え方が主です。
毛巣洞について: 欧米では第2次世界大戦時に硬い座席に座ったジープの運転者によく見られたことから“Jeep disease”とよばれ、体毛や摩擦、ホルモンなどが関与する後天性疾患と考えられています。
発症頻度について
1/2500~3000人の発症率とされます。
腰仙部皮膚陥凹の中には髄膜腔との交通をもつものが含まれてくることから鑑別が重要となります。
分類について
腰仙部皮膚陥凹は3つのtypeに分けられ、頻度はtype1から3の順で多いとされます。
type 1
陥凹が正中線上直線的な殿裂内にあるもの。
通常は臀裂に隠れていますが、用手的に臀裂を開くと陥凹がわかるもので瘻孔は形成せず盲端に終わります。
type 2
屈曲した殿裂の上縁近くに陥凹があるもの。
多くの場合は陥凹部分で殿裂は緩いカーブを描きます。
type 3
陥凹が明らかに殿裂の上方にあるもの。
症候性となる確率も高いと考えられ、治療対象になることが多いとされます。
検査について
これらの穴は臨床症状がないことと、type1のように臀裂上、すなわちお尻の割れ目上にあること、周囲の皮膚異常がないことが確認されれば画像検査の適応はないとされています。
type3のように皮膚異常があったりtype2.3のように臀裂より離れた位置に穴がある場合には、レントゲンや超音波による二分脊椎のスクリーニングを行い、脊柱管との交通や深度を診断するにはMRIを施行します。
正常であれば脊髄円錐(脊髄が糸に分岐する手前)が生後2~3ヶ月までに第1~2腰椎の高さまで挙上しますが、皮膚陥凹のある児では低位円錐(通常より低い位置に脊髄円錐がある状態)となることがあり、その評価のため、生後3ヶ月ころにMRIを撮影します。
低位円錐を伴う脊髄異常を認めた場合は、脊髄係留症候群を発症する可能性が高いとされています。
脊髄係留症候群とは脊髄がある場所に係留して神経が引き伸ばされることで神経障害をきたした状態で、下肢の筋力低下や膀胱直腸障害がみられることがあります。
脂肪腫が原因のこともあり、その場合は脊髄脂肪腫、脂肪脊髄髄膜瘤といいます。
これらの脊髄の癒合不全に基づく病変を総称して潜在性二分脊椎症といいます。
治療について
髄膜腔との交通(二分脊椎)が疑われる場合には脳神経外科へ相談し、外科的治療が検討されます。
臀裂上にあり特に症状がなければ治療は行いません。
まとめ
今回は腰仙部の皮膚陥凹について詳しくまとめました。
type1の場合は経過観察で問題ありませんが、お尻の割れ目より上にあるtype2.3の場合は二分脊椎の可能性があります。
かかりつけ医に相談して検査を検討しましょう。
皆さんも参考にしてみてください。
五味玲ら. 腰仙部皮膚陥凹と脊髄疾患. 小児外科 Vol. 50 No. 2, 179-183, 2018‒2