新型コロナウイルスに市販の漢方薬は効果があるのか解説します【補中益気湯、十全大補湯、銀翹散】
今回、金沢大学附属病院漢方医学科の小川恵子先生の寄稿から、新型コロナウイルスに対して漢方薬が有用であるかも知れないという記事があったのでまとめてみます。
日本感染症学会のホームページから見ることができますのでご参照ください。
漢方薬を使う際の注意点
一番の注意点はエビデンスが確立していないことです。
また、中国と日本では気候や体質が異なるため、異なった病態を示す可能性も多くあることもあるとされます。
本来は漢方医学診断から処方を決めた方が効果が高いと推察されるため、一般化しての処方では効果が得られない可能性があることも考慮する必要があります。
漢方薬に期待できる効果
手洗い、うがい、不要不急の外出を 避けることももちろん重要ですが、漢方薬には免疫力 を上げる働きも報告されています。
このような働きを持つ漢方薬を補剤と言って、免疫システムを活性化します。
無症状病原体保有者の病原体陰性化の促進も期待できます。
今回、この寄稿で紹介されていた、日本でも手に入る市販の漢方薬について紹介します。
予防に用いる漢方薬
補中益気湯
動物実験より、補中益気湯はインターフェロン自体の産生を抑制すると報告されています
十全大補湯
ヒト対象の研究では、十全大補湯服用によってNK細胞機能が改善されることが分かっています。
また、抑制系も活性化されることから過剰な炎症の予防も予想されます。
治療に用いる漢方薬
清肺排毒湯
新型コロナウイルスに対する治療薬として中国では使用されている様です。
残念ながら清肺排毒湯は日本ではエキス製剤として販売されていません。
ですが、麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏の3剤を組み合わせることにより同等のものを作成することができるようです。
今回、清肺排毒湯の有用性について示す論文についても紹介しておきます。
王饶琼らの発表で、清肺排毒湯の投与を受けた98症例の後ろ向き検討で有効性が報告されています。
対象は9日間、清肺排毒湯の投与を受けた98症例で、軽症54例、普通型33例、重症及び重篤型11例。
筆者らは清肺排毒湯はコロナウイルス肺炎の治療に優れた臨床効果があり、患者の副作用を軽減し、治療効果を効果的に改善すると結論付けています。
6日後、CRPとESR(炎症マーカー)は正常化。CT画像は6日間の治療後に79人(80.6%)の患者で改善しました。
単群の後ろ向き検討ではありますが、注目すべき点は、投与開始3日後に30%の症例で咳嗽が消失していることと、86.6%が解熱していることです。
この報告からは、迅速な効果があったと考えられました。
2003年、SARS流行時に銀翹散(ぎんぎょうさん)が有効であったとされており、新型コロナウイルスでもその効果が期待されます。
ですが現時点で銀翹散の有用性を示す報告はみつけられませんでした。今後、症例の蓄積が待たれます。
まとめ
今回は小川恵子先生の寄稿を紹介させていただきました。
コロナウイルスに対しては日々いろいろな情報が錯綜しています。
今後も有用な情報があれば紹介していきたいと思います。
小川恵子.COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方.2020.3.19.日本感染症学会 http://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=140
王饶琼ら.清肺排毒汤治疗新型冠状病毒肺炎的临床疗效观 察.中药药理与临床. https://doi.org/10.13412/j.cnki.zyyl.20200303.002